「画家が、マーケティングを教えている」
そう聞いたとき、起業家や経営者のみなさんは、どんな印象を持つでしょうか。
「絵描きが商売の話?」「それ、情報商材じゃないの?」——正直、そう思った方も多いかもしれません。
実際、株式会社ナレッジアーツの代表である画家、岡部遼太郎さんの名前で検索すると、「評判」と並んで「詐欺」という言葉が出てきます。
ですが、岡部遼太郎さんの経歴と評判を調べた記事と、ご本人へのインタビュー記事を読むと、見えてくるのは、アートという「売り方が確立していない市場」に、ごく普通のビジネスの型を持ち込んだ事業の姿でした。


本記事では、2本の記事を読んだうえで、起業家・ビジネス実務家の目線から、岡部遼太郎さんの事業を見てみます。
まず前提:画家という職業の「売り方」を理解する
画家の仕事は、長く「いい作品を描けば、画廊や画商が見つけてくれる」という形で成り立ってきました。
作る人と売る人が分かれていて、作る側は売り方を知らなくてもいい。裏を返せば、売る人に見つけてもらえなければ、どれだけ描いても収入にならない。
岡部遼太郎さんは、まさにその壁に長くぶつかった一人です。
東京藝大に6回挑み、5浪で多摩美術大学に入学。卒業後もアルバイトをしながら描き続け、本人いわく、最初に作品が売れるまで10年かかったそうです。
起業家として見た岡部遼太郎さんの事業の特徴
①自分で「売れる」ことを証明してから教えている
岡部遼太郎さんは、ブログで発信を続け、アクセスは多い月で月間19万に。ネットでの作品販売では、販売サイトを使わず、ブログとSNSで1週間に原画と版画を合わせて12枚、およそ60万円を販売したことがあるそうです。
アルバイトを辞めたのも、月に20万円ほど自力で稼げるようになってから。
自分で成果を出してから、その方法を教える。起業家にとっては当たり前の順番ですが、「教える」ビジネスでは意外と守られていない順番でもあります。
②作る人と売る仕組みを分けている
インタビューで岡部遼太郎さんは、「マーケティングは会社で行い、講師は教室の現場の仕事に専念できる形にする」と話していました。
描く人は描くことに集中し、集客は会社が担う。役割の分担として、非常に合理的です。
さらに、作品の発信を支援するサービス「Magnel」を自社で開発しているのも、同じ考え方の延長線上にあります。「本業は制作なので、発信に時間を取られるほど描く時間が減る」という課題に、仕組みで応えている形です。
③月額制で、継続を顧客に委ねている
Next Art Collegeは月額9,800円(税込)の月額制。退会は、次回の課金日の5日前までにメールで連絡するだけです。
一度に高額を払わせるモデルではなく、毎月、続けるかどうかを受講生が決める。事業者から見れば、満足してもらえなければすぐに解約される、厳しいモデルでもあります。
④「仲間」を増やすことを事業の目標にしている
岡部遼太郎さんの目標は、「自分で仕事をこなせる絵描きを100人くらい集めて、お互いに紹介し合い、個展を宣伝し合える環境を作ること」だそうです。
教える相手を、競合ではなく協力者として見ている。コミュニティを事業の中心に据える発想です。
⑤制作と教室を分けず、経験をそのまま商品にしている
岡部遼太郎さんは、制作と教室の運営を、別々の仕事として分けていないそうです。制作の様子を撮影すれば、その制作方法や技術がそのまま授業になる、という考え方です。
Next Art Collegeは、令和8年9月時点で22講座・663本。アート技法編が11講座・314本、アートとお金・活動編が11講座・349本と、描く技術と届ける技術がほぼ半々です。パステル画・テンペラ画・CG制作などは分野ごとの専門講師が担当し、講師は教室の生徒や、これまで一緒に仕事をしてきた人から選んでいます。
自分の経験を一次情報として商品にし、足りない分野は専門家で補う。小さな組織が品揃えを広げるときの、理にかなった進め方と言えます。
⑥受講生の「出口」まで設計している
学んだあとの出口を用意している点も、この事業の特徴です。
- 受講生と一緒に、東京・池袋やグランドニッコー東京 台場で展覧会を開催。出品者から展示料を取らない企画展
- 1回の展覧会で、受講生の作品を100万円以上販売したことがある
- アートオークションの企画を立ち上げ、作品の販売までつなげている
- 観光庁の予算による仕事を受注し、手を挙げた受講生に渡した
- 書家やカラーセラピスト、似顔絵作家の受講生に向けて、イベントの仕事も作っている
いずれも個人の実績で、成果を保証するものではありません。
教育サービスの多くは「学ぶ」ところで終わりますが、ここでは発表と仕事の機会まで含めて一つのサービスになっています。受講生にとっては続ける理由になり、事業者にとっては継続して選ばれる理由にもなり得る設計です。
事業の原点:営業と発信を自力で身につけた経緯
岡部遼太郎さんの評判を読み解くうえで見ておきたいのが、この事業の元になった経験です。
壁画の仕事で学んだ「聞き取り・提案・段取り」
多摩美術大学の在学中、岡部遼太郎さんは仲間と、壁画や絵画の制作を仕事として受けるチーム「TAMAKOBO」を始めています。
壁画は、依頼主の空間と予算と希望を聞き取り、下絵を作って合意を取り、現場で仕上げる仕事です。絵の技術だけでなく、聞き取り・提案・段取りが要る。受注型のビジネスの基本そのものです。ここで受けた仕事が、今ナレッジアーツで教えている「絵を仕事にする方法」の元になっているそうです。
画廊には自分から連絡した
「5浪して描いてきた努力が仕事につながらなければ意味がない」と考えた岡部遼太郎さんは、展覧会を回り、ネットで絵で食べていく方法を探しました。銀座で展示して絵の収入で生活している画家を見つけると、すぐに連絡を取り、絵を直接見てもらった縁で画廊の企画に入っています。
見つけてもらうのを待つのではなく、自分から取りに行く。起業家の言葉で言えば、営業です。
ブログは「読む人の役に立つ情報」を書いた
ブログでは、自分の日常や作品の画像ではなく、誰かの悩みや疑問を解決できる情報を記事にしたそうです。最初は今の半分ほどの情報量の記事を丸一日かけて作り、月間1万アクセスまでは毎日書いて半年ほど。失敗したサイトも含めると数年かかっています。
月間19万アクセスは、この積み上げの結果です。検索上位に出すための勉強とリサーチも続けたといい、中身は、多くの事業者が取り組むコンテンツマーケティングと変わりません。
起業家・ビジネス実務家として注意して見たいポイント
無料講座からの案内という「売り方」は誤解されやすい
ナレッジアーツは、無料の講座をメールで届け、もっと学びたい人に有料の教室を案内しています。
この形は、英会話教室の体験レッスンや学習塾の体験授業と同じ、ごく一般的な売り方です。ただ、悪質な情報商材でも使われるため、「この売り方=詐欺」という先入観を持たれやすい。
「岡部遼太郎 詐欺」という検索結果は、この先入観と、個人名に「詐欺」を付けてLINE登録を集めるブログ記事が重なって生まれたものと見るのが自然です。
実際、批判記事の中には、所在地を「レンタルオフィスらしき住所」と書いたものがありますが、謄本の本店所在地、公式サイトの特定商取引法に基づく表記、国税庁の法人番号公表サイトの住所は同じです。別の批判記事には、記事の中で「確定的な詐欺の証拠とは言えません」と自ら書いていたものもありました(その記事は、現在は削除されています)。
同じ売り方を取り入れる事業者にとっては、他人事ではありません。料金、退会方法、特商法表記を先に見せておくことの大切さがよくわかる事例です。
返品不可・連絡はメールのみという条件
授業はデジタルコンテンツのため、申し込み後の返品は受け付けていません。その代わりの月額制です。
退会は、次回の課金日の5日前までにメールで連絡し、届いた退会フォームを課金日の3日前までに送信する流れです。特商法表記には、電話での対応はできないためメールで連絡するように、とも書かれています。
条件は公開されていますが、利用を検討する側は、申し込む前にこの2つの期限と連絡手段を確認しておくのが無難です。
成果には個人差がある
受講生の成果として、ホームページとブログで生徒を増やした絵画教室の講師や、原画を13万5,000円で販売した画家の例が紹介されています。
ただし、岡部遼太郎さん自身が「個人の実績であり、成果を保証するものではありません」と明言しているとおり、受講すれば誰でも同じ結果が出るわけではありません。本人も、「受講するだけで成果が出ると考えている方には向きません」と話しています。
独立を目指す人へ:岡部遼太郎さんの考え方
起業家や独立を考える方にとって参考になるのが、岡部遼太郎さんが「絵で生きていきたい方」に向けて話している内容です。
- 稼げないうちに今の仕事を辞めるのはおすすめしない。勤務時間外に、コツコツ収入の準備をする
- 絵が描けるだけでは仕事にならないので、マーケティングの考え方も身につける
- スキルには長い積み上げが要る。努力の質を上げれば、時間は短くできる
本人も、月に20万円ほど自力で稼げるようになってから、アルバイトを辞めてフリーランスになっています。業種を問わず、独立の順番として通じる話です。
今後については、これまでに学んだ知識で店舗事業を行い、マーケティングの知識が無い絵描きも独立できるようにしていきたいと話しています。その一つが、2026年冬に所沢で始める子供アート教室「enico」です。オンラインの教室から、地域の店舗型の教室へ。事業の広げ方としても注目したいところです。
まとめ:アートの世界に「普通のビジネス」を持ち込んだ先進的な事業
岡部遼太郎さんがやっていることを、起業家の目線で一言で表すなら、「売り方の確立していない市場に、発信と集客という普通のビジネスの型を持ち込んだ」ということになります。
普通の業界なら当たり前のことでも、アートの世界ではまだ珍しい。珍しいものは、怪しく見えやすい。
「岡部遼太郎 詐欺」という検索結果の裏にあるのは、事業の中身ではなく、その新しさへの戸惑いなのかもしれません。
新しい市場を見るとき、「怪しい」と思考を止めるのではなく、その仕組みを一度フラットに見てみる。岡部遼太郎さんの事業は、そのことを考えさせてくれる事例だと感じました。
岡部遼太郎の評判に関する参考記事
- 岡部遼太郎は誰?ナレッジアーツ代表の評判と経歴を調べたら、「詐欺」とはほど遠い画家の歩みが出てきた
- 岡部遼太郎さんの評判を調べた記事を読んで、ご本人にインタビュー。東京藝大に6回挑んだ画家が「絵で食べていく方法」を教える理由
- 岡部遼太郎は詐欺なのか?評判を調べると「詐欺」が出てくる理由を考えた所感
- 岡部遼太郎の評判と経歴の記事を読んだ感想|起業家目線で見た「画家×マーケティング」という事業
- 岡部遼太郎のインタビュー記事を読んだ感想。「詐欺」と検索される画家が、5浪の末に見つけた描き続ける方法
- 岡部遼太郎の評判を調べた記事を読んで、ウェブ集客の目線で「1週間に12枚売れた」話を見てみた
- 岡部遼太郎の詐欺疑惑と評判に関する記事を読み比べて、名前で検索される側から考えてみた
- 岡部遼太郎の評判を「詐欺?」と思って調べたら、藝大に6回挑んだ画家の経歴で印象がガラッと変わった
- 岡部遼太郎は誰だ?絵で食べていく道を教える画家経営者~私の経営者名鑑が徹底紹介
- 岡部遼太郎(画家)は「空想の風景を描き、画家の仲間を増やす人」~「私の推し名鑑」が徹底紹介
- 岡部遼太郎とは?画家・ナレッジアーツ代表の経歴と評判、「詐欺」と言われる理由まで整理
- 株式会社ナレッジアーツ(千代田区)の口コミと評判!謄本と特商法表記からNext Art Collegeの「詐欺」疑惑を徹底調査
- ナレッジアーツの口コミと評判が気になって調べてみたら、代表の岡部遼太郎さんに話を聞きたくなったのでインタビューした話
- インフルエンサーマッチングサイトの岡部遼太郎のプロフィール
- 岡部遼太郎のLISTEN
- 岡部遼太郎の読書メーター
- ヤフー知恵袋の岡部遼太郎の質問
公式・関連リンク
